逢善寺本堂

逢善寺

慈雲山無量寿院逢善寺は小野の観音様としても親しまれる、茨城県稲敷市の天台宗寺院です。


由来と歴史

勅願寺としての権威と学問の拠点

​小野観音逢善寺は、平安初期の天長3年(826年)、伝教大師最澄の弟子である逢善上人によって、常陸国河内郡小野村(現・茨城県稲敷市小野)に創建されました。本尊・千手観音菩薩を祀る当山は、淳和天皇の勅願寺として篤い帰依を受け、古くから「小野の観音様」の別称で広く信仰を集めてきた天台宗の古刹です。

​江戸時代に入ると、徳川幕府より朱印地三百石を拝領し、正徳3年(1713年)には天台宗の官立僧侶養成機関である「関東八檀林」の一つに数えられるに至りました。中古天台における学問の中枢として、多くの学僧を輩出してきた権威ある歴史を有しています。また、救済の寺としての側面も持ち、時代を超えてあらゆる人々の祈りを受け止めてきた、地域信仰の中核を担う存在です。


伽藍と文化財

時代を繋ぐ至宝と建築の美

境内に点在する伽藍や文化財は、往時の繁栄と高度な建築技術を今に伝えています。現在の本堂は、二度の火災を経て天保13年(1842年)に再建されたもので、昭和の修復を経て今に伝わる銅板葺きの重厚な造りが特徴です。本堂天井には、稲敷市出身の日本画家・松本楓湖による「飛天の図」が描かれており、華麗な天女の舞う姿が当時の芸術水準の高さを物語っています。​山門である仁王門は、明治2年に東京麹町の日枝神社から移築されたもので、文明年間(1469年〜1487年)に太田道灌によって建造されたと伝わる貴重な遺構です。これらを含む書院、庫裡、金剛力士立像、五鈷鈴や五鈷杵など、茨城県指定文化財を多数擁する境内は、茨城景観百選にも選定されており、一千二百年の時が醸し出す静謐な空間を形成しています。